ここまでを見ると、一人の命式を形づくる材料が少しずつ見えてきたように思える。
しかし、十二支には、表から見える五行だけでは分からない「内側の気」が存在することはご存じだろうか。
たとえば、寅は陽の木性を持つ十二支である。
しかし寅の中に含まれているのは、木性の甲だけではない。
その内側には、丙や戊といった別の十干も隠されている。
この、十二支の中に隠された十干を「蔵干」という。
蔵干は、十二支をさらに詳しく読むための情報であると同時に、
十大主星や人体星図を導くための重要な土台でもある。
なぜ、一つの十二支の中に複数の十干が存在するのか。
同じ十二支を持っていても、生まれた日によって選ばれる蔵干が変わるのはなぜか。
今回は、十二支の奥に隠された気「蔵干」の仕組みを見ていこうと思う。
蔵干とは?
蔵干は「ぞうかん」と読む。
「蔵」には、内側にしまう、隠して持つという意味がある。
つまり蔵干とは、
十二支の内側に隠されている十干のことを指す。
十干が木・火・土・金・水の気を、陰と陽に分けて直接表すのに対し、
十二支は季節の移り変わりを含んだ存在となる。
季節は、ある日突然すべてが入れ替わるわけではない。
冬から春へ移る時期には、冬の冷たさを残しながら、少しずつ春の生命が動き始める。
このような季節の中で混ざり合う複数の気を、十干で表現したものが蔵干である。
蔵干には本元・中元・初元などの区分があり、
他の推命系統では本気・中気・余気、あるいは正気・中気・余気と表記される場合もある。
ただし、採用する蔵干や区分の日数には流派差があるため、
一つの表だけが絶対的な正解というわけではない。
十二支は「器」、蔵干は「中身」
十二支と蔵干の違いは、器と中身に置き換えると分かりやすい。
- 十二支 = 季節や環境を表す器
- 蔵干 = その器の中で動いている五行の気
たとえば、寅は陽の木性を持つ春の十二支である。
しかし、寅の中にあるのは木性の甲だけではない。
寅には、
- 甲
- 丙
- 戊
という三つの十干が含まれている。
春を代表する甲の木性だけでなく、
これから強まる丙の火性や、季節の変わり目を支える戊の土性も内側に持っている。
だから同じ寅でも、表面に見える性質だけですべてを判断することはできない。
十二支に含まれる蔵干一覧
十二支の内側には、一つから三つの十干が含まれている。 これらは季節の進み方に応じて、初元・中元・本元に分けられる。
節入り直後に表れやすい気
季節が移り変わる途中の気
その十二支を代表する中心の気
| 十二支 | 読み | 陰陽五行 | 初元 | 中元 | 本元 |
|---|---|---|---|---|---|
| 子 | ね | 水 | ― | ― | 癸 |
| 丑 | うし | 土 | 癸 | 辛 | 己 |
| 寅 | とら | 木 | 戊 | 丙 | 甲 |
| 卯 | う | 木 | ― | ― | 乙 |
| 辰 | たつ | 土 | 乙 | 癸 | 戊 |
| 巳 | み | 火 | 戊 | 庚 | 丙 |
| 午 | うま | 火 | ― | 己 | 丁 |
| 未 | ひつじ | 土 | 丁 | 乙 | 己 |
| 申 | さる | 金 | 戊 | 壬 | 庚 |
| 酉 | とり | 金 | ― | ― | 辛 |
| 戌 | いぬ | 土 | 辛 | 丁 | 戊 |
| 亥 | い | 水 | ― | 甲 | 壬 |
「―」は、その段階に独立した蔵干を持たないことを表している。 ただし、蔵干が存在しないという意味ではなく、 季節を代表する本元などの気が継続していると考える。
本元・中元・初元とは?
十二支の中に複数の蔵干がある場合、それぞれがまったく同じ強さで働くわけではない。
算命学では、季節の深まりを大きく三段階に分けて考える。
◆初元◆
節入り直後に現れやすい、前の季節から残された気。
新しい月へ入っていても、直前の季節の影響がまだ残っている状態を表す。
◆中元◆
初元から本元へ移る途中の気。
季節が切り替わる過程で働く、中間的な性質を表す。
十二支によっては中元を持たない場合もある。
◆本元◆
その十二支が本来持っている中心的な気。
季節が十分に深まり、その十二支らしい五行が表れた状態である。
他の流派では、初元を余気、本元を本気または正気と呼ぶことがある。
中気の扱いや各期間の日数には複数の考え方があり、採用しない流派も存在する。
蔵干は「節入りからの日数」で変わる
蔵干を読むうえで重要になるのが、節入りである。
算命学の一か月は、一般のカレンダーのように毎月1日から始まるわけではない。
立春・啓蟄・清明など、二十四節気に基づく節入り日を境に月の十二支が切り替わる。
そして、節入りから誕生日までに何日経過しているかによって、
初元・中元・本元のどの蔵干を採用するかが変わる。
同じ寅月に生まれた人でも、節入り直後に生まれた人と、
月の後半に生まれた人では、採用される蔵干が異なる。
星導界でも、月支だけを見て一律に蔵干を決めるのではなく、
節入りからの経過日数を使って、その時点に対応する蔵干を取得する仕組みを採用している。
節入りからの経過時間や日数で蔵干を選ぶ考え方は広く使われているものの、
具体的な区切り方には流派差がある。
二十四節気と十二支の関係
二十四節気は、一年の太陽の動きを24に分けた季節の目印である。 十二支の月は、二十四節気のうち「節」と呼ばれる12の節気を境に切り替わる。
円の外側が二十四節気、内側が十二支の月を表している。
十二支の月と節入り・中気一覧
寅月 春
- 節入り
- 立春
- 中気
- 雨水
- 時期
- 2月ごろ
卯月 春
- 節入り
- 啓蟄
- 中気
- 春分
- 時期
- 3月ごろ
辰月 春
- 節入り
- 清明
- 中気
- 穀雨
- 時期
- 4月ごろ
巳月 夏
- 節入り
- 立夏
- 中気
- 小満
- 時期
- 5月ごろ
午月 夏
- 節入り
- 芒種
- 中気
- 夏至
- 時期
- 6月ごろ
未月 夏
- 節入り
- 小暑
- 中気
- 大暑
- 時期
- 7月ごろ
申月 秋
- 節入り
- 立秋
- 中気
- 処暑
- 時期
- 8月ごろ
酉月 秋
- 節入り
- 白露
- 中気
- 秋分
- 時期
- 9月ごろ
戌月 秋
- 節入り
- 寒露
- 中気
- 霜降
- 時期
- 10月ごろ
亥月 冬
- 節入り
- 立冬
- 中気
- 小雪
- 時期
- 11月ごろ
子月 冬
- 節入り
- 大雪
- 中気
- 冬至
- 時期
- 12月ごろ
丑月 冬
- 節入り
- 小寒
- 中気
- 大寒
- 時期
- 1月ごろ
星導界では、一般的なカレンダーの毎月1日ではなく、 立春・啓蟄・清明などの節入りを基準に月支を切り替える。 さらに、節入りから誕生日までの経過日数によって、 初元・中元・本元のどの蔵干を採用するかを判定している。
なぜ十二支の五行だけでは足りないのか
十二支には、それぞれ基本となる五行がある。
たとえば辰は陽の土性である。
しかし、辰の蔵干には、
- 戊
- 乙
- 癸
が含まれている。
表面上は土性であっても、
その内側には木性の乙と、水性の癸が存在する。
辰は春の十二支であり、春の木性や冬から残る水性を抱えながら、
季節を次へ運ぶ土性として働く。
つまり十二支の五行は、その支が立っている大きな舞台を示し、
蔵干は、その舞台の内側で実際に動いている細かな気の流れを示す。
蔵干から十大主星(星導士)が導かれる
蔵干は、単に十二支を詳しく説明するためだけの情報ではない。
算命学では、日干と蔵干の関係から十大主星を導いていく。
本人の日干
×
各位置の蔵干
↓
十大主星
たとえば、日干が甲だからといって、中心星が必ず貫索星になるわけではない。
人体星図の中心星は、日干だけで決まるものではなく、
月支から選ばれた蔵干と日干との関係によって導かれる。
そのため、同じ日干を持つ人でも、月支や節入りからの日数が異なれば、
中心星が違うことがある。
蔵干の選択が中心星をはじめとする十大主星の算出に使われるため、
節入りをどこまで正確に扱うかが命式計算にも影響する。
恋愛相性では蔵干をどう読む?
恋愛相性では、表面に現れやすい行動だけでなく、
その人が内側に持っている愛情の動きも重要になる。
たとえば、同じ寅を持つ人でも、
採用される蔵干が甲・丙・戊のどれになるかによって、日干との関係は変わる。
その結果、導かれる十大主星も変わり、
- 自分の意思を守ろうとする
- 相手へ温かく気持ちを伝える
- 現実的に関係を支えようとする
といった違いとして現れる可能性がある。
ただし、甲なら必ず積極的、戊なら必ず堅実というように、
蔵干だけで性格を決めるものではない。
重要なのは、本人の日干から見て、その蔵干がどのような関係になるかである。
同じ蔵干でも、日干が変われば導かれる星も変わる。
そのため星導界の恋愛相性では、十二支の動物的なイメージだけで判断せず、
日干
+
十二支
+
蔵干
+
そこから生まれる十大主星
を重ねて、二人の愛し方や関係の動きを読んでいく。
蔵干を知ると、人体星図の意味が見えてくる
人体星図に表示される十大主星は、最初から独立して存在しているわけではない。
その背景には、十干・十二支・蔵干の組み合わせがある。
前回までの記事で見てきた、
十干
十二支
に、今回の蔵干が加わることで、
星導界の人体星図がどのように作られているのかが少しずつ見えてくる。
十二支は季節と環境を表し、蔵干はその内側に流れる気を表す。
そして日干との関係から、十大主星という人間的な性質へ変換される。
蔵干は、十二支と人体星図をつなぐ重要な橋となる。